斜視手術について

斜視とは

斜視とは両目の視線がまっすぐ向いておらず、片目が別の方向に向いている状態のことを言います。子供では約2%に斜視を認めます。斜視には、その捉え方で様々な分類に分けることができます。

斜視の分類

生まれながら斜視か、そうでないか

生まれながら斜視があるのを先天性といい、後に斜視がでてくるのを後天性と言います。

視力は生まれながら備わっているのではなく、色々な物を見ることで発育し獲得する能力です。

もし先天性に斜視があると視力の発達が遅れたり(弱視)、両目で立体的に見たり、奥行きを感じる機能(両眼視)が育たない可能性があります。

絶えず斜視になっているか、時々、斜視がでるか

絶えず斜視になっているのを恒常性といい、普段は正常で、時々、斜視になる例えば、疲れた時や、ボーとした時になるのを間欠性と言います。

外傷などで片目が失明してしまった場合では、恒常性の特に外斜視となることが多いです。

目の位置(眼位)のパターンによる分類

目が内側に向いている内斜視、目が外側に向いている外斜視、上下にずれるのを上下斜視と言います。

目の位置がずれているかは、正面から、フラッシュを焚いて写真を撮ると黒目(角膜)の中央に光があたっているかどうかで確認できます。

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赤い点:フラッシュ光のあたっている場所

偽斜視

一見、斜視に見えて、実はずれていない状態を偽斜視と言います。

特に我々、黄色人種(モンゴロイド)では、赤ちゃんの時に、内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)といって鼻が低く、瞼の皮膚が目頭にせり出していることが多く、鼻側の白目(結膜)の正面から見えている面積が耳側の白目の面積より小さく見えるため、内斜視になっているように見えます(偽内斜視)。

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斜視の種類

乳児(先天)内斜視

生後6ヶ月以内、ほとんどは1ヶ月以内に発症する内斜視です。
かなり眼位ずれが大きく、どちらか一方だけがずれるのではなく、時に右目、時に左目と交代することがあります。

また、片方を隠すと目が小刻みに揺れる(眼振)ことがあります。

両目で同時に見ることはできないため両眼視は発達せず、視力も発達しない弱視となることが多く、早急に眼科を受診する必要があります。

その場合、いつから内斜視になったのかがポイントになるので、生後すぐや内斜視に気づいた時の写真を持参して下さい。

両眼視獲得のためには、2才までの早期手術や生後6~8ヶ月までの超早期手術が有効とされています。

調節性内斜視

中等度~高度の遠視があるためにピントをあわせる力(調節)が過剰にかかるために内斜視となるタイプです。

視力が発達し始め、調節をよく使うようになる1歳半以降に内斜視となることが多く、平均2歳から2歳6ヶ月の発症が最も多いです。

遠視を完全矯正した眼鏡にて眼位を矯正できます。もし、眼鏡をしても内斜視が残る場合(部分調節性内斜視)は、視線の方向を曲げるプリズム眼鏡や、眼位ずれが大きい場合には手術となることもあります。

急性内斜視

突然発症する内斜視で物がダブって見える(複視)ため日常生活に支障が出ます。

発熱やストレスが誘因となるタイプや中等度以下の近視でもともと内斜位があったものが急激に恒常性内斜視となるタイプなどは知られていますが、近年、スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスを長時間使用している若年者に急性内斜視が増えており、社会的に問題となっています。

デジタルデバイスの時間を短くすることで、内斜視が軽減することもありますが、改善しない場合は手術となります。

間欠性外斜視

時に正常、時に外斜視となるのが間欠性外斜視です。寝起きや疲れた時やボーとした時に外斜視となるのが特徴です。

外斜視となっている時には物が2つ見える(複視)状態ですので、普段は無意識に目に力をいれていて、外斜視にならないようにしています。

子供では、まぶしい屋外は両目をあわせにくくなるため複視を感じ、片目つぶりをしたり、大人であれば、たえず目に力がはいるため、眼精疲労の原因になることもあります。

外斜視の状態が長く続くとずれた目からの映像を脳は消去して、片目だけに意識を集中して見るようになるため両眼視機能が低下してきます。

両眼視機能が低下すると、遠近感が感じなくなり、ボール遊びや平均台などが苦手となり、両眼視機能がなくなると恒常性外斜視に移行します。

治療としては、両眼視機能を強化する視能訓練、眼位ずれが小さい場合はプリズム眼鏡、ずれが大きい時は斜視手術があります。

両眼視が低下してくると外斜視の頻度が増えるため、プリズム眼鏡や手術を検討しますが、子供の手術の場合、もどり(手術直後では眼位が良かったのに、徐々に外斜視が増えてくる)をおこすことがしばしばで、当院での自験例を調べると、子供では術後2年間は、もどりが出やすいという印象があります。

ただし、両眼視がまったくない状態の手術成績は、両眼視が残っている場合と比べるともどりが多くなる傾向があるため、子供の間欠性外斜視の手術はタイミングを慎重に検討する必要があります。

大人の場合は、眼精疲労や容姿的な理由で手術を希望されることが多いです。

恒常性外斜視

恒に外斜視となっている状態です。

先天的に外斜視になっている場合や間欠性外斜視から移行する場合、また、外傷などで片方の視力が悪くなったためになる場合もあります。

多くの場合は両眼視機能がなくなっており、プリズム眼鏡は期待できません。基本的には容姿的な目的で手術となります。

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