白内障手術と同時に行える低侵襲緑内障手術(iStent)
iStentとは?
iStent(アイステント)は、「低侵襲緑内障手術(MIGS:Micro-Invasive Glaucoma Surgery)」と呼ばれる新しいタイプの緑内障手術です。
長さ約1mmほどの非常に小さな医療用チタン製のステントを眼内へ留置する手術で房水の流れを改善することで眼圧を下げる手術です。
従来の濾過手術と比べて侵襲が少なく、安全性が高いことが特徴です。
iStentの仕組み
眼の中では「房水」という液体が作られています。
緑内障では、この房水の出口(線維柱帯)が目詰まりし、眼圧が上昇します。
iStentは、その詰まった部分を小さなステントでバイパスし、房水がスムーズに流れる新しい通り道を作ります。
つまり、詰まった排水口をバイパスするイメージです。
白内障手術で作成する小さな切開創からステントを挿入するため、新たな傷を作る必要がなく、白内障手術に続けて約5分の追加の所要時間となります。
iStentのメリット(論文報告では)
眼圧下降効果
約2~5mmHgの眼圧下降(一般的には15〜25%程度)が期待できます。(個人差あり)
緑内障点眼本数を減らせる
平均約1~1.5本減少するため、患者さんの点眼をする負担や点眼による副作用が減り、またコストも軽減できる可能性があります
手術の負担が少なく、術後の回復が早い
濾過手術など他の緑内障手術と比べ手術時間が短く、低侵襲であるため、手術の負担が少なく、術後の回復が早いです
重篤な術後の合併症が少ない
濾過手術などで問題となる感染症や低眼圧症、脈絡膜剥離など重篤な合併症のリスクが少ないです
iStentのデメリット
眼圧下降効果に限界がある
濾過手術と比べ、約2~5mmHgの眼圧降下のため、眼圧を大きく下げることが必要な重症緑内障では、濾過手術など他の手術が適している場合があります。
一時的に見え方や眼圧が不安定となる
ステントを挿入する線維柱帯は血管があるため、術後に少量の出血(前房出血)がみられることがありますが、多くは自然に吸収されます。(出血の程度は個人差あり)
ステントの閉塞
まれに血液や虹彩組織などによってステントが詰まる(閉塞する)ことがありますが、その頻度は低く、多くの場合は経過観察や追加処置で対応可能です。
白内障同時手術のみ
白内障同時手術でのみ施行可能で、iStent単独手術は保険の対象外です
このような方におすすめです
✔ 白内障手術を予定している
✔ 軽症〜中等度の緑内障
✔ 点眼を減らしたい
✔ 点眼による副作用で困っている
✔ 将来の緑内障進行をできるだけ抑えたい
当院でのiStent治療成績
(2023年12月~2026年1月 6ヶ月以上経過観察できた症例)
対象68眼
平均眼圧:術前16.6±3.0mmHg→術後14.6±2.8mmHg
6ヶ月で術前から約2.0mmHgの眼圧降下
点眼数:術前1.9±1.1本(1~5本)→術後0.4±0.7本(0~2本)
6ヶ月で術前から約1.5本の減少
ステントを挿入する線維柱帯は血管があるため、術中かならず出血を起こします。
当院の結果でも術後1週間目は前房出血を起こしやすいため、眼圧が不安定となり、眼圧が1次的に上昇する症例が多く、1週間を過ぎると速やかに眼圧が下がる傾向がありました。
また、iStent手術により緑内障点眼が減っている上に眼圧は術前よりも低下しており、しっかり効果が期待できるという印象です。
まとめ
iStentは非常に優れた治療ですが、すべての患者さんに適しているわけではありません。
また、点眼が減ることが期待できますが、絶対に点眼がなくなるとはいえません。
当院では、患者さんの緑内障の進行度、眼圧、視野検査、OCT検査、隅角検査などを総合的に評価し、iStentが適しているかどうかを判断した上でご提案しております。
白内障と緑内障を同時に治療したい方、点眼薬による副作用や点眼本数をできるだけ減らしたい方は、お気軽にご相談ください。