
副院長の湖崎 亮です。
今回は収差(物の歪み)についてお話しします。
眼内レンズによって引き起こされる収差の軽減については、9月25日のブログで少し書きましたが、白内障手術で視力が良好でも、術後、物のにじみやぼやけを訴える患者さんに希に遭遇することがあります。現在、普及している球面眼内レンズは、その特性から、収差(物の歪み)の中で球面収差という成分が増えてしまうと報告されており、ぼやけの原因の1つと言われております。
この球面収差を補正するために非球面眼内レンズが開発されました。現在、日本では、数社のメーカーから、非球面眼内レンズが発売されております。ただし、もともとの角膜の球面収差が大きい方に、球面眼内レンズを入れると、術後の眼球全体の球面収差が増え、視力の質に影響する可能性が出てきますが、術前の角膜の球面収差が少ない場合では、眼球全体の球面収差は低く、視力の質に影響しないと考えられ、その適応、効果などに関しては、まだまだ議論する必要があると思われます。
また、非球面眼内レンズが、思ったほど普及していない理由としては、収差を測定する波面収差解析装置などの機械が高価であり評価も難しいこと、非球面眼内レンズの値段も高いこともあるかと考えます。
国の医療費削減計画で、各医療機関は厳しい経営を強いられており、特に、白内障手術は、どんな高価な眼内レンズを使っても、請求できる保険点数は同じで、高価な眼内レンズを使えば使うほど、経営を圧迫するという点があります。当院では、現在、球面眼内レンズを使用しておりますが、適応のある方には、今後、非球面眼内レンズを使用するつもりでおります。
現在は、自費診療で効果も不安定な遠近両用眼内レンズも、さらに改良されるでしょうし、来年には、乱視も矯正できる新しい眼内レンズが、厚生労働省の認可をうけるようです。白内障手術は、視力の質を求めるという新しい時代に入ってきていると感じますが、当院でも安全で質のいい白内障手術を目指したいと思います。
コメント一覧
御牧 信行 | 08.11.21 13:13:30
現在、近所の眼科で白内障と診断され進行を抑える目薬を処方いただいて数ヶ月が経過しました。
近所の眼科の先生はまだ手術の必要なしと言われますが個人的には仕事でも結構不便があるので手術を受けることも考えておりますが、もともと近視と乱視があり、手術してどうなるのかが不明で心配はありましたが、ブログに乱視も治せるレンズが来年には保険で手術できるとあるので、来年までこのまま我慢すべきかとも考え始めております。
手術をする/しないをどう判断されているのかなどの情報もブログで記載いただくと自分が受けるかどうかについて参考にさせていただきます。
湖崎眼科 湖崎亮 | 08.11.26 08:59:02
副院長の湖崎亮です。
御牧様へ私なりの考えをお話します。
手術をするかしないかの基準は、まず
①患者さんが、日常生活上、不自由を感じてられるか?
②その症状の原因が白内障である。もしくは、原因が別にあっても白内障手術をすることで、視機能が改善すると予想できる。
③白内障手術の利点、欠点の説明を聞かれた上で、手術を希望されるか。
以上の3点を満たす場合となります。
①に関しては、患者さんの訴える症状ですので、患者さん個々の生活レベルや性格によっても大きく左右されると思われます。例えば、職業が運転手であったり、趣味が写真撮影や絵画であるなど、視力の質を求められる場合は、白内障の程度のわりに、訴えが強くなり、手術時期が早くなる傾向があります。
②に関しては、近視や乱視などの屈折異常だけでなく、最近は、視力検査ではわからない、収差も視機能の質に影響していることがわかっており、視機能の質の低下が、白内障によっておこっているか調べる必要があります。ただ、角膜の歪みを測定する角膜形状解析や収差を測定する波面収差解析の装置は、どの施設でもあるわけではありません。さらに、手術は、術後、裸眼で、どの距離でピントがくるか、眼内レンズの度数を操作することできるため、術後の視機能回復が期待できます。
最後に③に関してですが、①、②の条件を満たしていても、最終的に決めるのは、患者さん自身です。これらの事柄を考えますと、患者さん、1人、1人、ケースバイケースであると言えます。具体的に、例をあげますと、例えば、車の運転を職業とされている方で、白内障により対向車のライトが眩しいと訴える場合では、矯正視力は(1.0)であっても手術になることがあります。
まずは、御牧様の仕事で不便を感じるという症状が、白内障によるものか、白内障手術によって視機能の回復が期待できるか、詳細な検査をおこなう必要があると思われます。